現在は多くの人で賑わう沖縄中部の北谷町アラハビーチ近くで、1960年代末に、有害な枯葉剤エージェント・オレンジがドラム缶数十本ぶんも埋却された。そう語る元米兵が、ジャパン・タイムズ社が入手した1970年の地図でその場所を指し示した。
埋却が疑われるのは、この一帯がまだ米軍のハンビー飛行場の一角であった1969年のことで、1981年に民間利用に返還されて以後、観光地として再開発された。今日、付近には人気のアラハビーチと併行して走る道沿いにレストランやホテル、アパートが立ち並んでいる。
最近、在沖米軍駐留中にエージェント・オレンジを埋却したという主張がいくつも出されているが、民間地にその場所が特定されたのは今回が初めてのことで、独自の環境調査の実施に道を拓くことになるだろう。
今年8月、ひとりの元米兵が、1969年に座礁した米輸送船からダイオキシンを含むエージェント・オレンジのドラム缶を何十缶も積み卸す作業をしたと証言した。そのとき、彼は、ハンビー飛行場に掘った45メートル長の溝に枯葉剤を埋めるのを見たと言う。[8月24日付けJapan Times紙記事参照]
彼は、42年前とは景色も変化したため、現在の地図では、埋却したと思われる正しい場所を特定出来なかった。
しかし、有志の沖縄住民から提供された1970年のハンビー飛行場の地図をつかって、元米兵はドラム缶を埋めた場所をピンポイントで特定した。
「その地図にある長い埠頭を見たときすぐに、エージェント・オレンジが埋められた場所は判った。いつもこの埠頭から釣りに出かけていたからね。これを見れば場所を見つけるのは簡単だった。間違いないと思う」。沖縄に駐留した経験のある元米兵はジャパン・タイムズにそう語った。
彼は、1960年代から1970年代、アメリカがヴェトナム戦争へと向かっていく時期の沖縄で、エージェント・オレンジを目撃あるいは散布したことを、最近になって証言し始めた20名以上の元米兵のうちの一人である。
彼らの証言がきっかけとなって、北谷町を含む4つの市町村長は、中央政府に対して調査を要請した。
10月28日、仲井真弘多沖縄県知事は、ジョン・V・ルース駐日大使と会い、この有毒化学物質について住民の不安を解消するよう求めた。[軍転協によるルース大使への要請]
ペンタゴンは沖縄におけるエージェント・オレンジの存在を一切、否定している。
元米兵は、ダイオキシンに由来する病に冒されているのは沖縄で枯葉剤に被曝したためだと確信しており、米政府が否定し続けるならば、北谷町の人びとの健康にも被害の危険を及ぼすと語っている。
「エージェント・オレンジのせいで私の体はぼろぼろだから、(埋められた)地域に住む住民が心配だ。転居すべきだ。赤ちゃんも診断してもらったほうがいいと思う。あの薬品が住宅地を汚染しているにちがいないからだ。調査の必要がある」。
匿名を条件に語った北谷町役場の職員は、ダイオキシン調査が必要かどうか判断するにはまだ時期尚早だと言う。しかしそのような調査の責任の所在を明言した。
「もし調査が必要ならば、それは日本政府の責任です。軍関係の汚染のばあい、国が調査し浄化するべきです」と職員は語った。
現在まで、東京は沖縄に貯蔵されたと疑われる枯葉剤について、米軍提供区域でのダイオキシン調査への協力を拒否している。
11月24日、外務省沖縄事務所は、名護市議会議員が要請した米海兵隊施設のキャンプ・シュワブにおける調査を拒否した。[外務省、枯葉剤「調査しない」]
ワシントンが、北谷町地域の軍用地で有毒化学品を処分したという疑いに直面したのは、これが初めてではない。2002年に、内容物の特定できない215缶ものドラム缶が埋められていたが、その場所はこの元米兵が示したエージェント・オレンジ埋却が疑われる場所から750メートルほど離れたところである。
NGO組織の沖縄生物多様性ネットワーク事務局の河村雅美氏によると、このときの調査はぞんざいに扱われた。
「沖縄県はドラム缶1本を調査しただけで、その後、500トンもの汚染土壌とともにすべて、産業廃棄物処理施設で焼却処分した。処分前のダイオキシン調査すらしなかったのです」。
このもっとも最近の証言が明るみになったため、河村氏はその215本のドラム缶にも、枯葉剤が含まれていた可能性があるとの不安を抱いている。来月、このNGOは沖縄県議会に対して、独自のダイオキシン調査を求める要請を提出する予定である。
15年以上、ヴェトナムにおけるエージェント・オレンジの影響を調査している専門家のウェイン・ドゥウェニチャックは、社会的不安を解消する唯一確実な方法は環境調査だと語る。
「もし、エージェント・オレンジがドラム缶に入った状態で40年以上前に埋却されたとすれば、100パーセントの確立で、その付近の土壌はダイオキシン汚染されているとの確信がある」とドゥウェニチャックは言う。
ドゥウェニチャックは、埋却された枯葉剤が、現在の住民の健康にもたらす危険性は最小限だと留保しつつも、「一つ注意しておくべきなのは、埋却場所に近接する帯水層から取水した井戸水があるばあい、エージェント・オレンジあるいはダイオキシンが浸透している可能性がある」と補足した。
今日まで、これらの疑惑の中心となった元米兵は、自分の身元を公開することには積極的ではない。
しかし、事態はまもなく変わるだろうと期待している。「私は、自分が目撃したハンビーでの出来事を説明するため、連邦議員と面談することになっている。米政府はあまりに長く嘘をつき続けて来た。そろそろ、元米兵と沖縄の人びとのために、真実を明らかにするときだ」。
翻訳 : 阿部小涼