面積2.7平方キロメートルを有する米海兵隊キャンプ・キンザー、沖縄の県都那覇に隣接し、近く民間への返還が予定されているこの基地について、米軍は、環境汚染の詳細な報告の公開を拒否した。
2014年4月以来、米太平洋指令軍(U.S. Pacific Command)は繰り返し、「USFJ、沖縄キャンプ・キンザーの有毒物汚染の可能性に関する討議資料」(“USFJ Talking Paper on Possible Toxic Contamination at Camp Kinser, Okinawa”)と題した 1993年報告書の情報自由法に基づく公開請求を妨害している。
そもそも、2014年10月、米国当局は報告書の存在を認識しつつも公開を拒否し、複数ある理由のなかでも「社会の混乱を防ぐ」必要があるからだと述べていた。情報自由法に基づく要求に続けて文書の要求を重ねると、当局は、8月の時点に立ち戻り、文書を持っていないので、場所の確認には時間を要すると述べた。
討議資料の全文が隠蔽されたとしても、専門家が米軍のために作成した別の文書には引用がなされており、こちらは公開されている。これらの専門家たちは、キャンプ・キンザーにおける広範な汚染について示唆している。
ある節は「過去に大量の有害物質を貯蔵していたことを原因とする、重金属と殺虫剤による環境汚染の証拠」について指摘している。別の箇所では、12.5トン以上の有毒な塩化第二鉄(ferric chloride)の埋却や、沖縄中部にあるキャンプ・ハンセンの埋立地に殺虫剤を廃棄したことを明らかにしている。
この報告書によれば、キャンプ・キンザーは、かつてマチナト(またはマキミナト)・サーヴィス・エリアと呼ばれていたのだが、ヴェトナム戦争時に逆行する化学物質(retrograde chemicals)の貯蔵拠点であり、それらには「殺虫剤、殺鼠剤、除草剤、無機・有機酸、アルカリ、無機塩類、有機溶剤、蒸気脱脂剤」などが含まれていた。
本記事を発表するまでの現時点で、討議資料の全文公開を行わないことについて、在日米軍からのコメントは得られていない。だが、沖縄国際大学の政治学者、佐藤学は、この基地の将来計画に関係があるのではないかと指摘する。
「キャンプ・キンザーの返還は、いわゆる『沖縄における米軍基地負担軽減』(‘reduction of the U.S. military footprint on Okinawa’)のなかでも歓迎されているもののひとつだ。だからペンタゴンは、返還の政治的価値を貶める可能性のある汚染の実態は隠しておきたいのだろう」と、彼は本紙に語った。
2013年の日米合意による国防総省の在沖米軍統合計画では、キャンプ・キンザーについて3段階の計画で「2025年又はそれ以降まで」に民間区域に返還するとされた。まず進入路の一部にかかる1ヘクタール区域は2013年に返還され、2ヘクタールは2014年に返還予定だったが、引渡は未だ行われていない。
キャンプ・キンザーは那覇に近いため、特に島の観光産業にとり、将来的な開発で地価も高まると目されている。かつて米軍基地に依存してきた沖縄経済だが、今日、県の統計調査によれば、基地の存在による地域経済への貢献は5%に過ぎない。そのうえ最近では、かつての米軍基地用地の汚染が、スムーズな民間地への返還計画の妨げになってきているのだ。
キャンプ・キンザーは沖縄における米海兵隊の一大補給基地のひとつで、弾薬や燃料、車両を保管している。また、初等学校、兵士と家族のための宿泊施設を擁し、約1000名の基地従業員が働いている。隣接する浦添市には、おおよそ11万4000人が暮らしている。
キャンプ・キンザーの環境汚染をめぐっては、立て続けに起こった事件が地域住民を不安に陥れた。2009年、基地倉庫で不明の物質に曝された日本人基地従業員6名が発症した。2013年には、提供区域付近で捕獲されたマングースから、高濃度のPCB汚染が検出された。その同月、これに先だって、名桜大学と愛媛大学の専門家らは、キャンプ・キンザー付近のハブから、高い汚染値のPCBと、禁止されている殺虫剤DDTを検出していた。
ハブの報告に対応するため、松本哲治浦添市長は、水質調査を指示し、日本政府に対して調査実施を求めると発表した。
日米地位協定によれば、ワシントンは、日本の公的機関による基地内の環境汚染調査を許可する義務はないうえに、返還後の基地用地の浄化責任も負わない。
現在、日米はSOFA環境補足協定の環境管理の枠組み作成最終段階にあり、地元の公的機関が、化学物質の漏出の際に、あるいは返還を目前にした土地の調査を目的として、基地内に入ることが出来るようになると期待されている。
ジョン・ミッチェルは、今年、沖縄における米軍の環境汚染や基地問題をめぐる調査報道によって、日本外国特派員協会より「報道の自由推進賞」の「報道功労賞」を受賞した。ご意見はこちらへお寄せ下さい。[email protected]
2014年4月以来、米太平洋指令軍(U.S. Pacific Command)は繰り返し、「USFJ、沖縄キャンプ・キンザーの有毒物汚染の可能性に関する討議資料」(“USFJ Talking Paper on Possible Toxic Contamination at Camp Kinser, Okinawa”)と題した 1993年報告書の情報自由法に基づく公開請求を妨害している。
そもそも、2014年10月、米国当局は報告書の存在を認識しつつも公開を拒否し、複数ある理由のなかでも「社会の混乱を防ぐ」必要があるからだと述べていた。情報自由法に基づく要求に続けて文書の要求を重ねると、当局は、8月の時点に立ち戻り、文書を持っていないので、場所の確認には時間を要すると述べた。
討議資料の全文が隠蔽されたとしても、専門家が米軍のために作成した別の文書には引用がなされており、こちらは公開されている。これらの専門家たちは、キャンプ・キンザーにおける広範な汚染について示唆している。
ある節は「過去に大量の有害物質を貯蔵していたことを原因とする、重金属と殺虫剤による環境汚染の証拠」について指摘している。別の箇所では、12.5トン以上の有毒な塩化第二鉄(ferric chloride)の埋却や、沖縄中部にあるキャンプ・ハンセンの埋立地に殺虫剤を廃棄したことを明らかにしている。
この報告書によれば、キャンプ・キンザーは、かつてマチナト(またはマキミナト)・サーヴィス・エリアと呼ばれていたのだが、ヴェトナム戦争時に逆行する化学物質(retrograde chemicals)の貯蔵拠点であり、それらには「殺虫剤、殺鼠剤、除草剤、無機・有機酸、アルカリ、無機塩類、有機溶剤、蒸気脱脂剤」などが含まれていた。
本記事を発表するまでの現時点で、討議資料の全文公開を行わないことについて、在日米軍からのコメントは得られていない。だが、沖縄国際大学の政治学者、佐藤学は、この基地の将来計画に関係があるのではないかと指摘する。
「キャンプ・キンザーの返還は、いわゆる『沖縄における米軍基地負担軽減』(‘reduction of the U.S. military footprint on Okinawa’)のなかでも歓迎されているもののひとつだ。だからペンタゴンは、返還の政治的価値を貶める可能性のある汚染の実態は隠しておきたいのだろう」と、彼は本紙に語った。
2013年の日米合意による国防総省の在沖米軍統合計画では、キャンプ・キンザーについて3段階の計画で「2025年又はそれ以降まで」に民間区域に返還するとされた。まず進入路の一部にかかる1ヘクタール区域は2013年に返還され、2ヘクタールは2014年に返還予定だったが、引渡は未だ行われていない。
キャンプ・キンザーは那覇に近いため、特に島の観光産業にとり、将来的な開発で地価も高まると目されている。かつて米軍基地に依存してきた沖縄経済だが、今日、県の統計調査によれば、基地の存在による地域経済への貢献は5%に過ぎない。そのうえ最近では、かつての米軍基地用地の汚染が、スムーズな民間地への返還計画の妨げになってきているのだ。
キャンプ・キンザーは沖縄における米海兵隊の一大補給基地のひとつで、弾薬や燃料、車両を保管している。また、初等学校、兵士と家族のための宿泊施設を擁し、約1000名の基地従業員が働いている。隣接する浦添市には、おおよそ11万4000人が暮らしている。
キャンプ・キンザーの環境汚染をめぐっては、立て続けに起こった事件が地域住民を不安に陥れた。2009年、基地倉庫で不明の物質に曝された日本人基地従業員6名が発症した。2013年には、提供区域付近で捕獲されたマングースから、高濃度のPCB汚染が検出された。その同月、これに先だって、名桜大学と愛媛大学の専門家らは、キャンプ・キンザー付近のハブから、高い汚染値のPCBと、禁止されている殺虫剤DDTを検出していた。
ハブの報告に対応するため、松本哲治浦添市長は、水質調査を指示し、日本政府に対して調査実施を求めると発表した。
日米地位協定によれば、ワシントンは、日本の公的機関による基地内の環境汚染調査を許可する義務はないうえに、返還後の基地用地の浄化責任も負わない。
現在、日米はSOFA環境補足協定の環境管理の枠組み作成最終段階にあり、地元の公的機関が、化学物質の漏出の際に、あるいは返還を目前にした土地の調査を目的として、基地内に入ることが出来るようになると期待されている。
ジョン・ミッチェルは、今年、沖縄における米軍の環境汚染や基地問題をめぐる調査報道によって、日本外国特派員協会より「報道の自由推進賞」の「報道功労賞」を受賞した。ご意見はこちらへお寄せ下さい。[email protected]
翻訳 : 阿部小涼